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【取材記事】環境に優しい「海洋散骨」という供養の選択肢。豊かな海を守り、人の心に寄り添うサステナブルな葬送をプロデュース

株式会社ハウスボートクラブ

海洋散骨を主軸に葬送プロデュースを行う株式会社ハウスボートクラブ(以下、ハウスボートクラブ )。2007年の創業以来、海とともに歩む同社は、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を責務とし、海を守る活動に取り組んでいます。
今回はハウスボートクラブで代表取締役社長COOをつとめる赤羽真聡さんに、海洋散骨の魅力やSDGsへの取り組み内容についてお話を伺いました。




お話を伺った方


株式会社ハウスボートクラブ・代表取締役社長COO
赤羽 真聡(あかば・まさとし)様

昭和59年4月14日生まれ。2007年東海大学卒業。楽天グループ株式会社、株式会社楽天野球団、株式会社鎌倉新書に入社。2019年より株式会社ハウスボートクラブに社長室室長として出向。同年10月取締役、2021年4月取締役副社長、2022年2月より現職。


■新しい供養のカタチを提案する「海洋散骨事業」と「お別れ会プロデュース」を展開


全国40カ所の拠点で散骨が行える強みをもつハウスボートクラブ。ハワイでも実施している


mySDG編集部:まずは御社の事業内容について教えてください。

赤羽さん:弊社は「海洋散骨事業」と「お別れ会プロデュース事業」の2軸で事業を展開しています。海洋散骨事業とは、いわゆる海に散骨をするサービスです。「ブルーオーシャンセレモニー」という名称で「チャーター散骨プラン」「合同乗船散骨プラン」「代行委託散骨プラン」など多様なプランやオプションサービスを提供しています。基本的にお客様が船に乗り、セレモニーを行う点が弊社の大きな特徴ですね。

もう一つの「Story(ストーリー)」というお別れ会プロデュース事業は、2022年1月に株式会社鎌倉新書から事業を譲受したサービスです。一般の個人のお客様から社葬や企業主催の​​お別れ会・偲ぶ会のほか、著名人のお別れ会・偲ぶ会もお手伝いしています。弊社のお別れ会プロデュースの特徴は、完全フルオーダーメイドで設計する点です。場所もホテルや会議室はもちろんのこと、レストランやバスツアーの形で亡くなった方の思い出の地をバスで回ったり、基本的には故人の想いを尊重した形で行っております。

mySDG編集部:ちなみに海洋散骨は、葬儀が終わった後に行うものなのでしょうか? もしくは葬儀の一つとして海洋散骨をするものなのか、どういった位置づけで申し込みされる方が多いのですか?

赤羽さん:基本的には葬儀は葬儀でしっかりやられて、その後に海洋散骨をされる方が一般的です。大体49日後に開催される方が非常に多いですね。弊社が行う散骨は、“悲しい散骨”というのは、やっていないんです。亡くなってすぐに行わなければならない葬儀はどうしてもしめやかな儀式になってしまいますよね。「楽しく」という言葉が正しいかわかりませんが、弊社の場合は「ありがとう」と笑顔で終わる会を目指しています。

mySDG編集部:どういった方が申込みされるケースが多いのですか?

赤羽さん:基本的に海が好きな方やその海に思い出のある方ですね。あとは、子どもたちに迷惑かけないように墓じまいをされたい方も結構多いんです。

mySDG編集部:海洋散骨と聞くと、勝手に散骨をしてよいものなのか、法律的な問題が気になります。そのあたりはいかがでしょうか?

赤羽さん:実際、海洋散骨は法律的にグレーじゃないかと色々疑問に思われることがあります。その点、2021年3月には厚生労働省から正式なガイドラインが出されました。あとは、会長の村田が立ち上げにも携わった「一般社団法人日本海洋散骨協会」が定めるガイドラインを遵守しながら行っているので、決してグレーではない、国が認めるルールに従って「新しい供養の方法」として海洋散骨に取り組んでいます。

mySDG編集部:とはいえ、海洋散骨と聞くと、どうしても一般的にはまだなじみのない「特別なもの」というイメージがあります。実際、海洋散骨の需要はどういった状況なのでしょうか?

赤羽さん:創業から約10年後の2017年には、創業当時と比べて約100倍にものぼる散骨をお手伝いしました。新型コロナウイルスの感染が広がる以前の2019年頃には、年間でおよそ640件、2021年はコロナ禍ということで少し落ち着き540件ほどでした。今年は約750件の見込みとなり、年々増えている状況です。

mySDG編集部:需要が高まっている背景にはどんなことが考えられるのでしょうか?

赤羽さん:いわゆる「おひとり様」が増加していることや、それこそ墓じまいをしたいというご家庭が増えるなど、日本の社会が少しずつ変化していることも要因として考えられます。企業努力という点では、葬儀社さんに新しい埋葬の考え方ということでお話をさせていただいたり、弊社が運営する終活コミュニティサロン「BLUE OCEAN CAFE(ブルーオーシャンカフェ)」(東京都江東区)で終活相談や体験イベントを開催することで、海洋散骨の認知につながったように感じています。(※2022年6月30日で閉店)


■遺骨を撒くだけでなく、遺族の心に寄り添う。人生100年時代に求められるグリーフケアを意識


終活コミュニティサロン「BLUE OCEAN CAFE」では、人生の終焉や生き方、いのちについて考える場を提供(※2022年6月30日で閉店)


mySDG編集部:御社が展開する「ブルーオーシャンセレモニー」は、単に海に遺骨を撒くだけでなく、グリーフケア(遺族の心のケア)まで意識していらっしゃるそうですね。

赤羽さん:はい。BLUE OCEAN CAFEでも、毎月1回「分かち合いの会」というグリーフケアのセミナーを開催していました。グリーフケアが必要な方が集まり、自身のことを話すことで少しでも気が紛れるような場を目指していました。BLUE OCEAN CAFEはすでに閉店しておりますが、セミナー自体は引き続き開催しております。

葬儀は、亡くなったらすぐにやらなくちゃいけないものですよね。でも、葬儀が終わった後にこそ、グリーフケアが必要な方はたくさんいらっしゃいます。そういった中で、我々は大切な方を失った悲しみに寄り添うことを大切にしています。散骨についてご相談いただく際も、いつまでにしなくちゃいけないというルールもないので、逆にお客様が決めたタイミングでご連絡くださいというようにお話をさせていただきます。一般的に商品を販売する観点から言えば、「この日にクロージングしなさい」みたいな感じになるのですが、我々としてはなによりお客様のお気持ちを大切にしています。

mySDG編集部:大切な方を失った傷がなかなか回復しない方は多くいらっしゃいますし、一方、核家族化が進み、孤独になりやすい日本の社会を思うと、グリーフケアはメンタルヘルスの観点からも今後ますます求められるようになると思います。

赤羽さん:そうですね。やはり大切な方を亡くされた方は、何かしらの心のケアが必要ですし、我々としては遺族の心に寄り添わなくちゃいけないと思っています。葬儀は、形式に則って粛々と進行することが求められますよね。その点、当社が提供する海洋散骨やお別れ会では、ご家族やご友人が集まり、亡くなった方がどういうことをやってきたのか、どういう人たちと巡り会ってきたのかを一緒に振り返ることで、心のケアができる場を提供しています。散骨もお別れ会も心のケアをサポートできるサービスだと認識しているので、今後はいかに取り組んでいくか、すごく重要な役目なのかなと思っています。


■環境負荷が最も低い海洋散骨。豊かな海を守るための3つのSDGs活動


従来のお墓や昨今急激に伸びている樹木層と比べても、環境負荷が低い海洋散骨。ただし墓地霊園の管理外で行うため、海への配慮を十分おこなうことが重要


mySDG編集部:今回SDGsに特化した特設サイト内で、御社が取り組む「海を守るための活動」を拝見しました。まず一つ目の「散骨前の有害化学物質の無害化」についてお伺いさせてください。千葉県勝浦市の妙海寺さんと共同で、遺骨に含まれる成分の共同調査を実施されたそうですね。遺骨に含まれる有害化学物質「六価クロム」に対して、無害化処理を行うことで、海洋散骨を行っても問題ないレベルになることが証明されました。どういった経緯で共同調査をされたのでしょうか?

赤羽さん: 妙海寺さんが、地元の千葉県勝浦市で海洋散骨を始めるにあたり、佐々木住職から当社の村田に直接ご連絡をいただき、個人的な相談を受けていました。 地域密着型のお寺なので、地元の漁師さんたちの理解を得るため、勝浦漁協の方々に妙海寺さんが説明を行ったところ、遺骨が海洋生物に与える影響について指摘されたそうです。遺骨に含まれる六価クロムは人体に微量に存在するほか、火葬炉内のステンレス架台に含まれるクロム成分が火葬の高熱にさらされて発生するといわれています。そこで、六価クロムを無害化することで含有量が基準を大幅に下回るというエビデンスと専門家のお墨付き文書を提出した方がよいだろう、ということで共同調査を行いました。

本調査の監修には、東京海洋大学海洋政策学科の客員研究員・山川紘先生にご協力いただきました。山川先生はもともと、勝浦の海で海洋生物の研究調査をされていたご縁で妙海寺さんとも深いつながりがあったそうです。そこで、佐々木住職を通じて今回の調査の監修を依頼した経緯があります。


遺骨に含まれる六価クロム化合物に対し、二種類の六価クロム還元剤を噴霧することで六価クロム化合物が無害化するかの調査を行った


mySDG編集部:なるほど。地元の方の理解を得るのは、なかなか簡単にはいきませんよね。

赤羽さん:そうですね。ただ最近では、厚生労働省のガイドラインの発表が追い風となり、徐々に受け入れられる傾向にあります。

mySDG編集部:なるほど。とても良い傾向ですね。続いてSDGsの二つ目の取り組みにあたる「環境に配慮したエコフラワーの開発」について教えてください。

赤羽さん:まず弊社では、粉末化した遺骨を納める際に水溶性の紙袋を用いています。環境に負荷をかけることなく、遺骨をすべて海に還すためです。そこから派生して、遺骨の後に海に手向ける生花も水溶紙で用意できないかと考え、今年から販売を開始したのが「エコフラワー」です。生花の場合もなるべく早く自然に還るように、茎や葉を取り除いて処理をしていますが、海流によって一部漁網に付着してしまったり、岸に流れ着いてしまったりすることがあります。そのため、現在はより環境に優しいエコフラワーをお客様にご提案しています。


2022年7月より販売スタートしたエコフラワーBOX


ご家族のメッセージを添えることもできるエコリース。そのほかエコブーケもオプションで販売


mySDG編集部:エコフラワーはいつから使用されているのですか?

赤羽さん:去年の秋ぐらいからテストを始めて、今シーズンからご希望のお客様に販売しています。エコフラワーは食紅で染めているので、生花では難しいブルーのバラをご用意できますし、皆様お好きな色の組み合わせを楽しんで選んでおられます。浮いて流れていく姿も美しいので、生花とエコフラワーを両方ともオプションで発注いただくケースが多いですね。

mySDG編集部:最後に三つ目の取り組みとなる「ご遺族とともに行う定期護岸清掃活動」について教えてください。こちらは現在コロナで中止されているそうですが、取り組みを始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか?


「故人が眠る海を綺麗に!」を合言葉に、遺族と一緒に東京湾の護岸清掃活動を実施


赤羽さん:我々は、日頃から海という場所を借りて仕事をしているわけですし、これまで多くのお客様が大切な家族を送られた場所でもあります。そういったところをきれいにすることは、我々のサービスとしても必要ですし、逆に言うと散骨をしたお客様も故人が眠る海をきれいにしたいという想いをお持ちだと思い、年1、2回は清掃活動を実施しています。

mySDG編集部:清掃活動をやってよかったことはどんなことでしょうか?

赤羽さん:海の沿岸はやはりゴミが多かったりするわけですよね。当社は、故人を偲ぶために海にお墓参りのようなカタチでお参りに行く「メモリアルクルーズ」を毎月定期運航しています。(2022年9月からは業界初オンラインでも開催予定)その際に故人の眠る海の周辺がきれいだと、お客様も気持ちよく参加できますよね。お客様にとっては、お墓の掃除みたいなものかなと思います。非常に意義のあることなので、基本的には今後も続けていきたいと考えております。


■自由な葬送の選択肢を提供するのがミッション。今後は生前マーケットも視野に


リアルとバーチャルを融合させた「VRお別れ会」もリリース。新しい時代の集い方をリアル×バーチャルで実現する


mySDG編集部:今後はおひとり様が増えるほか、少子化に伴い、代々お墓を守れない時代になってくるかと思います。人口減少などさまざまな課題を抱える今後の日本において、新しい葬送・供養の形についてお話を交えながら、今後の展望を教えてください。

赤羽さん:おっしゃる通り、核家族化やご近所づきあいが減っていく中で、葬儀に関しては縮小されていきますし、以前のように戻ることは恐らくないんですよね。しかし、基本的な形は変わっても、お別れの会や偲ぶ気持ちというものは、絶対失くしてはいけないように僕は思っています。故人を偲ぶために、ご家族が集まったり、それこそご家族が知らない故人の友人関係を知ったり、新たな人と人との出会いが生まれるのが、お別れ会のいいところです。今後は、身内だけでお別れをした後に、感謝を伝える会や故人を偲ぶ会みたいなものが主流になってくると考えています。

mySDG編集部:なるほど。こういった流れの中で、今後ハウスボートクラブとして挑戦していきたいことはどんなことでしょうか?

赤羽さん:今後の展望としては、生前のうちから感謝を伝える会を開催することですね。生きているから伝えられるものってあるじゃないですか。僕も両親には、感謝を伝えたい人たちをまとめたリストだけは作っておいてと伝えていますが、実際それぐらいしかできなくて……。自分の両親にどういう友人がいて、どういう仕事をして、どういうことやっていたのか、家族でもわからないことがあるわけですよね。だったら、自分が亡くなる前に自分でちゃんと感謝を伝える場があっても良いと思うんです。生前マーケットというと、マーケットの数や大きさも全然変わってきますけど、そういうものを日本の文化にしていきたいなと、今は強く思っています。

mySDG編集部:御社の海を守る活動に対して、SDGsの観点から注目していましたが、今回お話しを聞いて、また違った視点で魅力を再発見しました。今後は少子高齢化の日本において、家族のカタチも変化し、人とのつながりがますます重視される時代になっていくかと思います。その中で、誰も取り残さない形でその人の人生をお見送りするというのは、今後必要とされる事業だなと、つくづく感じました。

赤羽さん:ありがとうございます。「海洋散骨」も「お別れ会」も、まだまだ認知度が低いサービスです。しかし3年後には、一般の方々により受け入れられるサービスとして成長させたいと動いているところです。また今後おひとり様が増え、ご家族に迷惑かけたくないと考える世代たちが広がっていく中で、やはり墓じまいは増えていくと思います。そうなったときに、散骨というものを新しい供養の選択肢として提案できるのかなと。僕たちは別に「散骨をやってください、お別れ会をやってください」とは、一切言いません。この世の中、自由な葬送の選択ができるんです。それが海洋散骨だったり、お別れ会だったりするので、選択肢の一つとして世の中に広めていきたいという考えです。その点、まだマーケットが小さいので、いろんな会社さんと一緒にこのマーケットをぜひ拡充したいと思っています。

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