0本の木を植えました

mySDGの植樹活動について

thumbnail

正解のないアートを通して「多様性とは何か?」に向き合う 「社会課題×アート」が紡ぐ“自分らしさ”の可能性

LITTLE ARTISTS LEAGUE

アートを通して社会課題の解決を目指すグローバルアートチーム「LITTLE ARTISTS LEAGUE(リトル・アーティスト・リーグ)。TCK(サード・カルチャー・キッズ)の孤立を防ぎ、子どもたちの自由な表現の場づくりを目的として2006年に設立されました。以後、次世代を生きる子どもたちの多様な表現力とグローバルマインドを育むことをミッションに、多彩なワークショップやアートワークを展開しています。さらに昨今では、環境問題やダイバーシティなど深刻になりがちな社会課題をアートアプローチでわかりやすく捉え、まだ見ぬアートの可能性を探求しています。

今回は一般社団法人LITTLE ARTISTS LEAGUE代表理事であるルミコ・ハーモニーさんに、活動に込めた想いや2022年9月22日より開催中の「ダイバーシティアート やさしさの花展」についてお話を伺いました。



お話を伺った方


一般社団法人LITTLE ARTISTS LEAGUE代表理事/アーティスト
ルミコ・ハーモニー様
フィンランド人と結婚し現在3人の小学生のママ。子連れでブラジルに一年逗留した経験などから、グローバルマインドを会得。「日本に在住しながらグローバルマインドを養う」を形にし続けている。首相官邸でのワークショップ、外務省や大使館や区が後援につくイベント、H&MやMARLMARLとのコラボイベントなど、幅広く活躍。

■「自分は自分であっていい」 アートを通して“違い”を認め合う眼差しをもつ

感性にふたをせず、自由な自己表現が楽しめる「LITTLE ARTISTS LEAGUE」のワークショップ

mySDG編集部:「LITTLE ARTISTS LEAGUE」の活動を始めたきっかけを教えてください。

ルミコ・ハーモニーさん(以下、ルミコさん):直接的なきっかけは、フィンランド人の夫とブラジルで1年間過ごした経験からきています。日本・フィンランド・ブラジルという多様な文化の衝突を経験する中で、日本社会の良い所と悪い所がすごくわかったんです。日本は安全で暮らしやすいけれど、一方で自己肯定感を育む場がないと——。そのこと自体、大きな問題だと思いました。そのため私自身が軸足を置くアートの分野で取り組みを始めようと思い、ママ友とコミュニティを立ち上げたのが始まりです。

mySDG編集部:英語でアートを体験するワークショップを毎月開催されていらっしゃるそうですね。そもそも「自己肯定感を養うこと」と「英語環境でのアート体験」にはどのようなつながりがあるのでしょうか?

ルミコさん:LITTLE ARTISTS LEAGUEが誕生した横浜市には、さまざまな国籍の人たちが暮らしていることから、多様なバックグラウンドをもつ子どもたちの存在がありました。両親のどちらかが日本人で、日本語も流暢に話せるのに、周りからは「ガイジン」と部外者扱いされてしまう——。そんな経験を通して、彼らはアイデンティティの形成が非常に難しくなってしまうんです。彼らに向けて、「色んな国があって、自分は自分でいいんだ」と自分自身のことを肯定できる場を作りたくて、英語でのワークショップを始めたのが活動の原点です。当初は両親のどちらかが外国にルーツを持つ子どもたち—TCK(サード・カルチャー・キッズ)限定のコミュニティでした。しかし、日本人にとっても多様な文化との関わりは貴重な機会にもなると思い、夏休みや冬休みにオープンイベントをやるようになったことが、現在の形にまで広がりました。

mySDG編集部:実際に文化を超えたワークショップを開催してみて、子どもたちの様子はいかがでしたか?

ルミコさん:同じ材料を使って同じ作品を制作しているのに、それぞれまったく違うものが出来上がってくるんです。その時点で多様性について知ることができますよね。ワークショップの最後に行う鑑賞会では、作品に込めた思いなどを各自発表しつつ、それぞれの作品の気に入った点などを自由に伝え合っています。特にインターナショナルスクールに通っている子どもたちは自分の意見を他者に伝えることに慣れているようで、「僕はこの色好きなんだけど、ここもいいよね」なんて、積極的に発言しています。彼らを見て、日本人の子どもたちも「自分の気持ちを自由に言っていいんだ」と刺激を受けている姿が印象的ですね。

■「当たり前」を見直し、誰もが同じステージに立てるアート体験を

「ダイバーシティアート やさしさの花展」(開催期間:2022年9月22日〜2022年10月16日)では「視覚」だけでなく「嗅覚」や「聴覚」でも楽しめるコンテンツを展示

mySDG編集部:ITOCHU SDGs STUDIOで開催中の「ダイバーシティーアート やさしさの花展」は、「障がいとアート」という新たなフィールドへの挑戦を感じます。取り組みのきっかけはどんなことだったのでしょうか?

ルミコさん:やはりコロナの影響が大きかったですね。わが家の3人の子どもたちも小学校や保育園の休校が続き、いつもと比べて様子がおかしく、親としてはかなり心配しました。ましてや、病気を抱えていたり、障がいをもつお子さんの場合、親御さんの不安は計り知れないと、気付かされたんです。彼らのためにできることはないかと考え始めたものの、その分野で知識をもたない私が安易に足を踏み入れるべきではないと、どこかで気後れしていました。しかしコロナ禍を機に、障がい者向けにアートパフォーマンスを行う方とオンラインでワークショップを開催したことが転機になります。

事前にアートキットを郵送し、当日オンラインで一緒に作品を制作するという流れで開催していたのですが、回数を重ねるごとに知見もたまっていきました。ようやく手応えを感じ、私個人でもチャレンジしてみようと思い始めたところで、あと一歩が踏み出せなくなったんです。やはり重度の障がいがある場合、起き上がることさえ難しく、筆も持てないわけです。どうしたら彼らに向けてアート体験を提供できるのかと、思い悩む日々が続きます。

mySDG編集部:現状を打破したきっかけは何だったのでしょうか?

ルミコさん:一緒にワークショップを開催していたパフォーマーの方から「ぶつかっていけばいいんですよ」と声をかけられたんです。「本気でやれば子どもたちもちゃんと返してくれるから」って。

mySDG編集部:背中を押されたわけですね。

ルミコさん:はい。そこから色々と考えて、以前JR横浜タワーなどで開催した「やさしさの花」展のテーマである「やさしいことを一つすると、一つ咲くやさしさの花」をコンセプトに「やさしさ」のあり方について問いかける展示会を思いついたんです。展示作品の「やさしさの花」は、画用紙に絵の具を垂らして半分に折って開くだけで絵が出来上がります。もともとは2021年に病児たちとのワークショップの中で生まれ、ダイバーシティアートとして確立しました。障がいをもつ方々でも筆を使わずに作品が作れるので、障がいの有無に関係なく、素晴らしい作品がどんどん生まれます。まさにパラダイムシフトが起こる瞬間を体験できるんです。

「やさしさの花」を作るワークショップの様子

それこそ世の中には、「一生懸命やった人が優勝する」「才能がある人が頂点に立てる」という考え方が一部あります。しかし、そういう世界では障がいがある時点で、スタート地点にさえ立てないわけです。彼らにとって、健常者が思う“当たり前”なんて存在しない。だからこそ、世の中にはびこり過ぎている“当たり前”を見つめ直したいと思いました。「やさしさの花」のアートワークは、それぞれ多様な作品のあり方を認め、誰もが同じステージに立てるチャンスを平等に与えてくれるんです。

 

■ダイバーシティアートが教えてくれる「人生をめぐる偶然の楽しみ方」

2才の子でも高齢者でも指先が上手に動かせない子でも、予想を超える素晴らしい「やさしさの花」を作り出せる

mySDG編集部:会期中には「やさしい花」のアートワークショップも開催されるそうですね。絵の具を垂らすだけで、思いがけず素敵な作品に出合えるのはワクワクします。

会期中に開催予定のワークショップやイベント

ルミコさん:絵の具の色が混じり合って、思わぬ色の組み合わせから予想外のハーモニーが生まれたりするんです。適当に絵の具を置いただけなのに、まさかこんな上手にできると思わなかったと感動される方も多いですね。絵が上手・下手という優劣ではないところで、自分自身を認められて、自己肯定感を感じられます。そしてなにより色の組み合わせが生み出す偶然を楽しめるんです。

まさに人生も偶然の連続ですよね。偶然が重なって、人生が良い方向に進むことがあれば、悪い方向に進むこともあります。ただ、予期せぬ出来事に遭遇したとき、どう向き合うかによって人生は大きく変わります。一方向だけを見てがむしゃらに努力するだけはなく、ときとして起こる偶然に目を向け、それらを受け入れて生きていくことも人生には必要です。だからこそ、今回のワークショップが偶然を楽しむことの一つのレッスンになったらいいですよね。

「嗅覚」でもアートを楽しめる6種類の「やさしさの花の香り」を展示。今回は香りのアーティスト近田梨絵子さんの生徒さん6人が香りを制作。学んだ人が輝ける機会を創出している

mySDG編集部:ちなみに当日制作した作品は持ち帰れますか?

ルミコさん:はい。額に入れてお持ち帰りいただけるので、自宅に帰ったらすぐ飾れるんです。出来上がった作品は作って終わりではなく、今後の人生のスイッチになっていくことを我々としては願っています。眺めるたびに、そのとき感動したことや人々がもつ多様性について感じてほしいですね。「色んな人がいていいんだ」って。それこそ日常の中で、他者の存在を認めることはやさしさにもつながっていくのだと思います。

そしてやさしさも多様なものだからこそ、ダイバーシティイシューとして取り上げるべきテーマだと個人的に強く感じました。アートもやさしさも、輪郭がなく曖昧で、定義も多様です。しかしながら、そこに確かに存在しているもの——。その概念がアートとやさしさは合致しているからこそ、今回の展示会では新たな化学反応が生まれると思います。

■人とのハーモニーから生まれる新たなアートの可能性に挑戦

本展示では、色とりどりな「やさしさの花」を「聴覚」で楽しめるプロトタイプを映像で初公開

mySDG編集部:今回の展示会はまさに「ダイバーシティとは何か?」について、考えさせられる内容ですね。多様なアートの楽しみ方を提示してくれているようです。

ルミコさん:ありがとうございます。実は今回の展示では、聴覚でアートを楽しめるプロトタイプの紹介展示を行なっています。やさしさの花に描かれている色をデバイスで検知すると、色に応じた音が奏でられ、目の不自由な方にも色を楽しんでいただけるんです。

mySDG編集部:かなり画期的な取り組みですね。開発のきっかけを教えてください。

ルミコさん:開発のきっかけは、以前開催した「やさしさの花展」で、目の見えない方とアートを鑑賞したことです。その際、ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」でダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドを行っている視覚障がい者の方々にお越しいただき、目の見えない人とのアート鑑賞に初挑戦しました。通常は作品を触るのは禁止されていますが、特別に作品に触れたり、やさしさ花の作品について説明を聞きながら、一緒にアート鑑賞を楽しみました。その際に、「触っても色はわからないから、色を音に変換できたらいいのになぁ」と思ったんです。その想いをさまざまな人に話すうちに、開発支援をしてくださる方も登場し、今回の制作に至りました。

mySDG編集部:確かに、やさしさの花は色の交わりが素敵な作品ですもんね。実際に完成したものを体験してみて、いかがでした?

ルミコさん:目の見えない方には、元々の色合いがわからないので、音を聴いても楽しんでもらえるのか、その点が心配でした。しかし、実際に視覚障害をもつお子さんに体験にしてもらったら「面白い」って笑顔で喜んでくれて。思わず感動しちゃいましたね(笑)。アートの領域でやれることは色々あるなと、可能性を感じました。

▼その様子がこちらの動画

ルミコさん:そもそも目の見えない人とアートを鑑賞するよりも、音楽コンサートに行った方が楽しめるんじゃないかと考えるのが一般的かもしれません。でも、その時点で私たちはすでに諦めているわけです。だけど目の見えない方は諦めないんですよね。そこがすごく素晴らしいなって。今回も色を音に変換することも諦めずにやれば、ちゃんと実現できるんだと勇気をもらえました。そういった意味でも、まさに私自身の名前「ハーモニー」が表す通り、この先もさまざまな人たちと一緒にハーモニーして社会がもっとよくなるような仕掛けをドンドン作り出していきたいです。

【展示会情報】


■期間:2022年9月22日(木)~2022年10月16日(日)11:00~18:00
※休館日:毎週月曜日(月曜日が休日の場合、翌営業日が休館)
■会場:ITOCHU SDGs STUDIO (東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden B1F)
■料金:入館料無料
■関連イベント:ワークショップやトークイベントなど
(予約サイト:http://kindness-2022.peatix.com
■特別サイト:イベントの概要や歴史に加え、さまざまな方のやさしさのエピソード記事をご覧いただけます(https://www.littleartistsleague.org/kindness

■関連商品:会場内にて販売。売上の一部は、病児の子達のワークショップ無料招待などに活用されます。

この進捗のプロジェクト

この進捗がターゲットとする目標

sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg
sdg

この進捗が獲得した証明

mySDGによる証明

第3者ユーザーによる証明

公的機関ユーザーによる証明

SDGs進捗見える化メディアプラットフォーム

© 2022 bajji, Inc.