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【取材記事】「お客様も地球も大切にできる美容業界へ」 価格競争が続く美容業界をSDGsで変革へ導く

株式会社moto

2020年、大阪府大阪市にオープンしたヘアサロン「utari(ウタリ)」(株式会社moto)は、開店当初からさまざまなSDGs活動を行っています。「utari」が取り組むのは、SDGs17の指標のうち、「貧困をなくそう(目標1)」、「質の高い教育をみんなに(目標4)」、「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」など、7つの目標へのアクション。カラーやパーマの施術で使用する薬剤の排水問題やスタッフの労働環境の整備など、環境と人に配慮したヘアロン運営を日々行っています。今回は「utari」の代表・松本善人さんにSDGs活動を始めたきっかけや具体的な取り組み内容、今後の展望についてお伺いしました。

【お話を伺った方】

ヘアサロン「utari」(株式会社moto)代表・松本善人(まつもと・よしひと)様
1988年北海道千歳市生まれ。高津理容美容専門学校、近畿大学商経科卒業。美容室の商材マネージャーを経て、2020年 美容室utari設立、代表兼COO就任。美容事業、美容産廃事業、店販/システムコンサル事業、ディーラー事業を展開。

■美容師としての成功を模索する中で出会ったSDGsの存在

店名の「utari」はアイヌ語で「家族」を意味する。お客様やスタッフを家族のように大切に思う松本さんの想いが込められる

mySDG編集部:まずはSDGsへの取り組みを始めたきっかけを教えてください。

松本さん:これまで大手ヘアサロンで8年ほどキャリアを積み、その後フリーランスとして活動する中で、いわゆる美容師としての「成功とは何か?」を考える時期がありました。美容師としてそれなりにお金を稼ぐことが一般的な成功の形として捉えられがちですが、本当にそうなのだろうかと。自分の目指すべきものを探している中で、たまたまSDGsについて書かれた本を手に取り、深く共感しました。なかでも「誰一人取り残さない」という考え方は、ヘアサロン運営においても重要視するもので、自分自身が思い描く「成功の形」に通ずるものがあったんです。

mySDG編集部:具体的にはどのような点に共感されたのでしょうか?

松本さん:例えば「誰一人取り残さない」という思いで、スタッフ間でもメリットデメリットを考えずに助け合えれば、お店のゴールに向かって全員が協力していけると思うんです。結果として、健全な形での利益にも結びつきます。SDGsは、人も地球も豊かになるような目標であり、世の中になくなりつつあるものを取り戻そうという意識を感じます。それこそ美容業界ではクーポンの利用などで価格破壊が起こっていて、SDGsの取り組みに逆流するような動きが起こっています。そのあたりも業界全体として問題解決した方が早いですよね。誰もが自分の目の前のことに一生懸命になるのは当然ですが、自分の利益しか見えていないのはよくないんじゃないかと。仕事においてもやりがいは大切ですが、その先に親族やお客様、スタッフといった「家族」のためになっていることが、僕にとっての成功の形であるように思ったんです。

mySDG編集部:取り組みを後押ししたものの一つに美容業界の価格競争があり、それらを解決したいという思いもあるのでしょうか?

松本さん:そうですね。ただわれわれとしては一美容室としてやっているというよりも、一企業として、僕個人として何ができるんだろうと考えながら取り組んでいます。大企業ではSDGsの取り組みが一般化しつつありますが、中小企業となると目を向ける余裕がない企業もたくさんあります。それこそ一般の方の中には、具体的に何をすればよいのかわからないという方も多くいらっしゃいます。その点、われわれのような美容師はお客様と1対1でお話できる時間もあるので、お店の取り組みをお客様にお話しして、SDGsの認知を拡大することもできます。さらに他業種の方に向けて、取り組みを発信することで、何かしらのヒントを与えることができたり、さまざまな業界の方々とパートナーシップを結び、よりよい形で経済をまわしていくことも可能だと思います。そういった広い視点をもって、美容室という枠組みにしばられず、スタートアップ企業のような感覚でSDGs活動を行っています。

■美容業界が抱える「価格競争」をSDGsの考え方で解決に導く

1周年記念に制作されたフェアトレードのオーガニックコットンを使用したオリジナルTシャツ。仕入れ値の一部で生産国カンボジアの子どもたちを支援

mySDG編集部: 「utari」では、さまざまなSDGsアクションを行っていますが、特に美容業界として取り組みたい課題はどういったものだったのでしょうか?

松本さん:先ほども申し上げた通り、美容業界の大きな課題は価格競争ですね。集客をするために、価格を下げてクーポンを出すことで、価格が割れていきます。根本的な問題として、集客する能力やリピートする力がないから起きてしまうわけですが、この力がなぜないのかというと、そもそもお店の集客力に頼る人が多く、自分の力で集客できないからです。その要因の一つとして、アシスタント時代にスタイリストの勉強ができていないことが挙げられます。つまり、お客様やスタッフとのコミュニケーション能力や問題解決力、売上を作る力を身につけるための教育がなされていないんです。

その点「utari」では、入社後スタイリストの勉強に専念させる環境をあえて作っています。そのため入社前までにシャンプー、トリートメント、ヘッドスパはもちろんカラー塗布やブリーチのダブルカラーのレッスンまで行っているんです。

「utari」が取り組むSDGs7つの目標をInstagramで発信。詳細こちら 

mySDG編集部:ちなみにスタイリストの勉強とは具体的にどういった内容でしょうか?

松本さん:スタイリストに求められるのは、売上を作る力やお客様やスタッフとのコミュニケーション能力、マネジメント力などです。そのあたりを「SDGs de 地方創生」というビジネスゲームを活用して、スタイリストとしての心構えや考え方などを学んでいきます。「SDGs de 地方創生」とは、参加者が架空のまちの住人として人々と協力しながら、持続可能なまちづくりを目指すカードゲームです。参加者は、行政(税収から資金の使い道を決定する役割)と市民(一次産業従事者やまち工場の経営者、一市民などの地域の人々)の2つの役割に分かれて、12年間の地方創生プロジェクトに取り組みます。

ゲーム内ではさまざまな課題解決に臨みますが、そこで欠かせないのが「対話」と「協働」なんです。ゲーム終了後には、「こうすればもっとうまくいったよね」というような反省や話し合いを行うのですが、最終的には実社会の話につながっていきます。中でもゲームをプレイすることで、「対話」の重要性に気づかされるんです。それこそ仕事の現場においても対話を行うことで、スタッフ間のコミュニケーションがうまくいき、コミュニケーションがうまくいけば、強みを共有できたり、売上の作り方を学べたり。チーム全体として「誰一人取り残さない」という発想につながっていくように感じています。

「SDGs de 地方創生」を通して「対話」と「協働」を学ぶスタッフ

SDGsイシューマップで問題の連鎖を可視化する

mySDG編集部:つまりは優秀な人材を育成することで、クーポンに頼りきりになっている美容業界を変え、健全な形での業界の在り方を目指していらっしゃるということでしょうか?

松本さん:そうですね。正直、クーポンを出し続けて価格破壊が起きているのは自己責任だと思うんです。だからこそ単価アップのためには、質の高いサービスやより高い付加価値をつけていくことが求められます。とはいえ、単純にお店として利益をあげたいということだけなく、お金の使い道について考えることも大切です。売上が上がったなら、その分の利益を寄付に回すなど、美容業界として社会貢献の高い活動も行えます。社会のための活動を続けることで、業界のイメージも良い方向に変化しますよね。その結果、美容師の地位アップにもつながり、より良い人材が集まることで、一層世の中に貢献できる業界に変わっていけると思います。

■「美容室×限界集落の農業」 地域と人を巻き込んだSDGs活動に挑戦

オープン2周年記念に京都府にある限界集落「野間地区」のお米を期間限定で来店者全員に配布。農業と美容室の革新的なコラボで地域社会の活力向上に挑む

mySDG編集部:単純に美容業界が潤うためだけではなく、売上が上がれば「富を分配」して、豊かな世界を作るということを目指しているということですね。

松本さん:そうですね。われわれ美容師は日々、さまざまなお客様の髪のお悩みにのったり、カウンセリングを行ったりすることで、ホスピタリティ技術が養われます。ホスピタリティ技術とは人に合わせるというよりも、深く入りこんで相手をよく知ることでもあると思います。つまり、人のことをよく知り、人と人とをつなげるプラットフォームのような役割になれるため、これらの技術を活かして、地域や人を巻き込んで、より良い社会づくりに貢献できると考えています。

mySDG編集部:今回、京都府京丹後市の限界集落「野間地区」で生産された幻のお米「野間 -NOMA-」を区画オーナーとして買い取り、コラボ限定パッケージ品を開発されたそうですね。まさに地域と人を巻き込んだ地域貢献への意気込みが感じられます。

コラボ限定パッケージ品として『utari 2nd anniv × 野間 -NOMA- 【限定ラベル】300g』を開発

松本さん:「utari」のオープン2周年の記念企画として、9月中の来店者全員に野間地区のお米をプレゼントしました。今回は、育ったお米を買ったのではなく、区画を買っているので、そこで育ったお米はお客様のお金で育ったお米だと思って欲しかったんです。お米としてお客様に還元するというイメージですね。ヘアサロンはB to Cのサービスがメインになるので、SDGs活動の範囲が限られてしまうように感じていました。しかし今回は農業とコラボレーションすることで、B to BのビジネスとしてSDGsを推進する活動ができたのは大きな収穫です。他の美容室においても再現性が高いSDGs推進活動の一つとしてアピールできたと感じています。

mySDG編集部:ちなみになぜ野間地区のお米だったのでしょうか?

松本さん:野間地区は人口約150人、住民の9割が高齢者という限界集落です。野間地区で生産されている高品質のお米をお客様に食べていただくことで、「こんな美味しいお米が作られているんだ」と、集落を広く知っていただくことにつながると考えました。

というのも、野間地区はこのまま過疎化が進めば、村一個なくなる可能性もありますし、国内最高品質クラスのブランド米が消滅してしまいます。それは、日本全体で考えても大きな損失ですよね。今回は地方創生の取り組みとして、より直接的に地域社会にアプローチするため、日本を支える第1次産業である稲作に着目しました。現在、日本の稲作が抱える慢性的な課題である「後継者不足」「低い生産性」の解消が求められる中、野間地区の認知度を高めることで課題解決につながり、持続可能な地域社会づくりを目指せるように感じました。

mySDG編集部:今回開発されたコラボ限定パッケージの「野間 -NOMA-」は「utari」で購入できるのでしょうか?

松本さん:はい。ECサイト「utari presents」で販売しています。米農家の所得向上は地域社会の活力強化にもつながりますので、ぜひ多くの方に手に取っていただきたいですね。

■さまざまなパートナーと協力関係を築き、SDGs活動を牽引する存在を目指す

mySDG編集部:今後はどのような展開をお考えですか?

松本さん:「utari」の考えに賛同していただけるサロンさんと、法人チームをつくって、SDGs活動をさらに広めていきたいですね。野間地区での区画オーナーの活動や使用済みカラーチューブ回収の取り組みを一緒に行うほか、「SDGs de 地方創生」のカードゲーム講習を他のサロンに無料で行うことで、われわれのSDGs活動のノウハウなどもお伝えできます。SDGs活動のみならず、例えばリクルートやブランディングなどのアドバイスや経理などのサポートにも対応できます。このように多くのサロンと協力関係を築くことはSDGs活動を推進するためにも必要なことだと思っています。

mySDG編集部:協力しあえるパートナーをどんどん増やしていって、シナジーを生み出すということでしょうか?

松本さん:まさにそこを目指していきたいですね。やはり一人でできることは限られるので、SDGsに関してはさまざまな人を巻き込んで、SDGs活動を牽引する存在になることが今後の大きな目標です。

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