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【取材記事】「子ども食堂」を起点に高齢者とつながる地域コミュニティ。福祉が目指す地域共生社会に向けての試み

株式会社ライフケア・ビジョン

株式会社ライフケア・ビジョンは、住宅型・介護付有料老人ホ ーム、サービス付き高齢者向け住宅を運営する会社です。大阪吹田市にある自社運営住宅の「シニアアップデートマンション ライフケア吹田」の1階 多目的スペースWAIKI を利用し、NPO法人WAIKIを主体として子ども食堂「わいわいワイキ」の運営をしています。今回は、子ども食堂を開始する目的やきっかけ、今後の展望などを近藤様にお伺いしました。




【お話を伺った方】


近藤量行(こんどう かずゆき)様
株式会社ライフケア・ビジョン 新規開発本部 本部長・NPO法人WAIKI 理事長
マンション分譲・学生向けマンション・駐車場などの不動産企画・開発業務を経て、高齢者向け分譲マンションの企画提案業務に携わる。その後、社会福祉法人で障害福祉サービスの施設や事業所の事務長などを経験。高齢者や学生、障害者などの年齢やライフスタイルの異なる人々が交流する地域社会の創造を自身のテーマに持つ。
2018年株式会社ライフケア・ビジョンに入社し、大阪府を中心に有料老人ホームを経営。介護事業を軸に福祉用具貸与事業・給食事業などを幅広く展開。そのなかで近藤氏はアクティブシニア向け賃貸マンションの開発に携わりながら、2021年8月NPO法人WAIKIを設立。地域の高齢者に対しコミュニティの構築を通じて高齢者の自立・健康促進に寄与する事業を行う。


■高齢者住宅で開催する、子ども食堂「わいわいワイキ」の目的とは?

mySDG編集部:子ども食堂「わいわいワイキ」を始められた経緯について伺います。御社は有料老人ホーム運営事業を行っているとのことですが、なぜ、子ども食堂を始めることになったのでしょうか?

近藤さん:子ども食堂を始めたきっかけは、高齢者の孤立問題に課題を感じたことからになります。株式会社ライフケア・ビジョン(以下、ライフケア・ビジョン)は介護事業を中心に展開している会社で、介護保険制度の適用になる「要介護」とされている高齢者の方を事業の対象としています。

日本における65歳以上の高齢者総人口のおよそ8割の方は介護保険対象外の自立している高齢者なのです。問題点としては、その高齢者の方々が社会的に孤立していたり、健康面に不安を抱えながら自宅で暮らしていたりすることです。

これらの問題を課題と捉え、解決するために、自立している高齢者の方々が健康で有意義な生活を送ることができ、なおかつ地域社会との交流を維持できるような自立高齢者専用の共同住宅(賃貸マンション)を計画しました。
基本的に安心・安全への配慮、センサー、設備を備えていますが、特徴として、1階に「交流」を目的とした多目的スペースを設けていることです。

多目的スペースの活用方法を考えたとき、近隣の方々に喜ばれ、なおかつ社会問題に対応したものでありながら、高齢者の方が参加して喜んでもらえそうな内容がいいと考え、上がった案が「子ども食堂」だったんです。

やるとしたら継続的に開催しようと、NPO法人WAIKI(以下、WAIKI)を立ち上げ、子ども食堂を始めました。現在はWAIKIが運営主体で、中心メンバーはWAIKIで活動するライフケア・ビジョンとグループ会社のスタッフ、外部ボランティアスタッフで構成されています。

mySDG編集部:多目的スペースの使い方は、いくつか候補があったと思いますが、子ども食堂に決定した決め手は何でしたか?

近藤さん:当社社長の祝嶺(しゅくみね)は元料理人で、大阪の新地で有名な「神田川」という料亭で板前の修行を積んだ経歴があります。この背景から当社の事業方針の一つに、“おいしい料理を提供し、皆さまに喜んでいただく”があります。料理にはこだわりのある会社だからこそ、おいしい料理を広く皆さまに提供することで、何か地域に貢献できないかと考えたのです。


mySDG編集部:「おいしい料理」を通じて地域に貢献できること。その思いが「子ども食堂」につながったのですね。さらに、子ども食堂では、勉強を手伝ったり、イベントを開催したり、子どものための第三の居場所としても提供されているそうですね。

近藤さん:はい。始めは高齢者の方々が生きがいを持って何かに取り組める場所を作りたいと考えていたので、交流しながら楽しめることが目的としてありました。

高齢者の方々は特技や趣味をお持ちですが、それらを発揮できる場所が徐々に少なくなると思うんです。最初は漠然と、子ども食堂で勉強を教えたり、ゲームをしたりと、子どもたちと触れ合いながら力を発揮できる場がつくれたらいいと考えていました。

ただ、実際に学習支援を始めてみると、大学生が子ども食堂に興味を持ちボランティア活動として学習支援を申し出てくれました。
家族とは違う大人が近くにいる状況で宿題をすることは、お子さんにとってよい緊張感を生み出し、勉強にも一生懸命取り組めているようです。

高齢者の方は、お子さんのそばにいて、宿題をしている様子を見ているだけでも、とても楽しそうです。大学生にご協力していただいて、お子さんにも高齢者の方にも、いい効果がありましたね。


■ヤングケアラーのための「息抜きカフェ」はじめました


mySDG編集部:子ども食堂以外で定期的に行っている企画はあるのですか?

近藤さん:はい。ヤングケアラー(※1)のための「息抜きカフェ」も始めました。こちらは食事の提供が目的ではなく、日中(10時〜16時まで)好きな時間にお越しいただいて、長時間の滞在ができる場としてご利用いただけます。特に何をするかは決めていませんが、野菜を育てたり、絵を描いたり、クラフトワーク工作をしたりなど、その場でいろいろ考えています。
社会福祉士や公認心理士の資格を持つ方にも協力していただき、相談員としてお子さんの様子などを観察しながら、もし気になるお子さんがいたら、お声がけをして、状況確認をすることも一つの目的としています。

mySDG編集部:どれくらいの頻度で開催されているのですか?

近藤さん:息抜きカフェは、週1回、土曜日にオープンしています。最近は多くの方がご利用されています。

mySDG編集部:有資格者の方に相談できる場があるのはいいですね。ちなみに、イベントを開催したい場合、多目的スペースを借りることができるのですか?

近藤さん:はい。地域の方や、店舗などに場所をお貸ししています。子ども食堂と息抜きカフェ開催時は、ご利用者に飲食代をいただくのですが、場所をお貸しする場合は、1時間1,000円程度でご利用いただけます。
ママ会などで使いたいとか、飲食店さんが出張店舗を開きたいなど、一般の方も利用できる場として解放しています。

mySDG編集部:高齢者施設の敷地内の場所を一般の方や、飲食店さんが利用できるのは画期的ですね。

近藤さん:最近は、近くの大学で作業療法(※2)の講義をされている先生のセミナー会場としてご利用いただきました。先生自身もボランティア活動に携わっておられて、子ども食堂の企画にご賛同もいただいて、学生にもボランティアのお声かけをしていただきました。
その先生ご自身が「認知症カフェ」を開きたいとのことで、セミナー&カレーショップを開催しました。

mySDG編集部:地域の方々が、いろいろな情報を発信・受信できて、楽しむ体験もできる場所なのですね。

※1:「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがある。(厚生労働省HPより)

※2:作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助のこと。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。(一般社団法人 日本作業療法士協会HPより


■自立する高齢者が交流を経て、主役になることが理想


mySDG編集部:高齢者の方々のライフスタイルデザインや、今後の地域貢献活動について、ビジョンや目標はありますか?

近藤さん:当社としての将来の目標は、高齢者が地域で孤立するのを防ぐことです。
そのためには、近隣の方々にとって、やりたいことができる場所として、多目的スペースが定着できたらと考えておりますので、実施したい内容は、可能な限り意向に添いたいと思っております。そして、上階にお住まいの方々のご趣味に合う内容ならば、気軽に下りてきて楽しんでいただきたいです。

イベント参加を私たちが促すのではなく、高齢者の方々の居住スペースの近くで、常ににぎやかな状況をつくり、居心地がよさそうな雰囲気であれば、ご自身から見学したり、ご参加いただいたりできる、気軽な交流の場になればいいと思っています。
今後も高齢者の方々と地域の方々が交流できる企画やしかけを、継続的に用意していきたいと思っています。

mySDG編集部:地域社会では日常生活が年齢層で分断されがちですから、何気ない交流の感覚がいいですね。ちなみに「折り紙教室」や「歴史のお話会」など、高齢者の方が主役になるようなイベントはあるのですか?

近藤さん:将来的には高齢者の方が主役となって、サークルを立ち上げたり、料理教室を開いたり、特技を活かして主体的に企画をするのもいいと考えております。

現在WAIKIやライフケア・ビジョンが主体的に動いてマッチングや多目的スペースの活用方法を提案・活用していますが、徐々に認知が広がりつつある中で、周囲の方々から使い方のご提案や企画の要望をいただくようになっています。

私たちとしては、今後、高齢者の方々にもイベント企画を積極的に考えていただいたり、やりたい内容を意思表示していただきながら進めることができれば、大変理想的です。
落語がしたいのであれば、近くで落語をやっている方に声をかけて、落語会の開催のお願いに伺うなどですね。こういった動きが出てくれば、私たちの理想にかなり近づくと思っています。

mySDG編集部:今後の企画でお考えのものはありますか?

近藤さん:「町歩きツアー」を計画しています。地域の歴史を深く掘り下げると楽しそうだと思いまして、町を周りながら歴史の話をしてくれる町案内ボランティアさんに頼みまして、身近な地域の歴史をより深く皆さんに知っていただきたいと考えました。一緒に町歩きをしながら、身近な歴史の話をすることで、また新しい交流が生まれると思います。


■SDGsと同じ未来図を描く、福祉が目指す地域共生社会


mySDG編集部:子ども食堂や地域の方との交流イベントを開催していく中で、SDGs観点での目標はありますか?

近藤さん:福祉という意味では、地域の方々が助け合う社会が望ましいと思います。SDGsの観点からも、それを目指すべきだと思います。自分が他人を助け、他人にも助けられる、互いに助け合いをする地域共生社会ということですね。

子ども食堂は、まさにその一面を感じています。

SDGsの意識が日本でも広がり、SDGsは私たちの日常に浸透しています。あらゆることにSDGsのフィルターを通して考える習慣が徐々に広がってきているように思います。
その影響か、子ども食堂には個人の方、企業の方、行政など、さまざまなところから余剰食材などのご寄付を沢山いただきます。
こちらからのお声かけではなくても、ご寄付やボランティアをいただいていることを考えると、子ども食堂は共助社会が広がるきっかけになっていると思います。

mySDG編集部:そうですね。余剰食材の活用はフードロス削減につながり、SDGsの取り組みにもなっています。地域の人々とのつながりは、地域共生社会の出発点だと感じますね。

近藤さん:最初のきっかけとしては高齢の方の活躍する場やボランティア活動の場として始めた子ども食堂だったのですが、世の中におけるSDGsの意識の浸透が想像以上でして、とても関心が高い方が多く、寄付などもいただきました。

しかし、実際には、地域共生社会の実現はなかなか難しそうだと感じていたんです。なぜかというと、戦後、助け合いが当たり前だった社会から、段々と核家族化し、家族の孤立化が進んだ背景の中で、地域共生社会を取り戻すことは時代をさかのぼることになり、過去に戻るということは受け入れがたいのではないかと思っていました。

しかし、助け合う社会を目指す意識は想像以上に浸透しており、Z世代を中心に積極的な「助け合い」への関心が高まっているように感じます。

今後も関心の高い人たちが、子ども食堂などの社会貢献活動に目を向け、助け合う人たちが集まり、連携を深めつつ、その活動の裾野が広がって、より広域な「助け合い」につなげていけることが望ましいですね。

mySDG編集部:「子ども食堂×高齢者=新しい地域共生社会」のモデルになり得ると感じます。ぜひ、これからも地域の皆さんに、にぎやかで楽しい居場所づくりを続けてください。本日は貴重なお話をありがとうございました!

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