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【取材記事】過酷な労働条件と大量廃棄の課題に挑む。美容業界に一石を投じるサステナブルなヘアサロン運営とは?

THREE ARROWS株式会社

白髪染めを中心としたヘアカラー専門店「Age」を都内で5店舗経営するTHREE ARROWS株式会社(以下、THREE ARROWS)。美容業界が抱える「働き方」と「環境問題」の課題を解決すべく、2021年12月より正式にSDGsへの取り組みを始めました。2018年設立当初から「女性たちが働き続けられる環境整備」「ヘアカラー剤空き容器の資源化」を実現し、その先進的なヘアサロン運営が注目を集めています。今回は代表の今井基成さんに、SDGsへの取り組みを始めたきっかけや具体的な取り組み内容および広めたい成果についてお話しを伺いました。



お話を伺った方

THREE ARROWS株式会社 代表取締役
今井基成(いまいもとなり)様

1990年生まれ。東京都在住。家族が美容系の事業であったため、自分自身でも美容業界の道に。大学卒業後、銀行から独立したスタートアップにて経営・営業コンサルティングに従事、並行して美容師免許取得。スタートアップから独立後、白金台にてアイラッシュサロン開業スタッフに。2018年6月ヘアケアとヘアカラー専門店「Care & Color Lounge Age」を東京都三鷹市で開業。2019年10月「白髪染め専門店Age三鷹北口店」、2020年11月に3号店「白髪染め専門店Age渋谷店」、2021年3月に「Age荻窪店」、21年6月吉祥寺にアイラッシュサロン(まつげサロン)「Priage」、2022年1月に「Age武蔵境店」を開業して、現在都内6店舗を運営している。



■人と環境に配慮したサロン運営を。美容業界が抱える社会的・環境的課題にフォーカス



mySDG編集部:まずはSDGsへの具体的な取り組み内容について教えてください。

今井さん:SDGsの目標8「働きがいも経済活動も」と目標12「つくる責任、つかう責任」を目標に掲げ、一つは「働くママ美容師の積極雇用」、もう一つは「ヘアカラー剤空き容器の資源化」に取り組んでいます。

mySDG編集部:取り組みのきっかけはどういったものだったのでしょうか?

今井さん:意識的に取り組もうと決めたというよりも、設立当初からやっていたことが自然とSDGsにつながっていったという感じでしょうか。ヘアカラー剤の空き容器については、日々大量に出るゴミを減らせないかと考えたことがきっかけです。弊社の場合は、5店舗あわせて1ヶ月で900〜1,000本のカラー剤を使用していることから、年間にして約180kgにものぼる空き容器をゴミとして廃棄していました。

ヘアカラー剤の空き容器——いわゆる「カラーチューブ」は、毎月15kgのペースで排出される。


mySDG編集部:それはかなりの量ですね。

今井さん:そうなんです。出たゴミを捨てるだけではもったいない、何かに使えないかと模索していたところ、従業員から「BBリサイクルパートナーズ」の活動について教えてもらいました。

mySDG編集部:「BBリサイクルパートナーズ」とはどんな団体なのでしょうか?

今井さん:「理美容師だからこそできる社会貢献」をコンセプトに、ヘアサロンから集めたカラー剤の空き容器を買取業者に買い取ってもらい、そのお金で車椅子を購入し、地域の社会福祉協議会や介護施設へ寄付する活動を行っている団体です。弊社の所在地でもある三鷹市で活動されていることから、地域の活性化にもつながると思い、こちらからお声かけしました。


■SDGs活動の根底にある「美容師の地位向上」と「労働環境の改善」

mySDG編集部:世の中には多くのヘアサロンがある中で、カラー剤空き容器の大量破棄や働き方の課題に取り組まれているヘアサロンは決して多くはない印象です。今井さんご自身が社会問題や環境問題にご興味をお持ちだったのでしょうか?

今井さん:そこまで意識を高く持っていたというわけではないのですが、もともと創業したきっかけは、美容業界に昔から蔓延しているブラックな労働環境に疑問を持ったことです。私自身、父と母、姉が美容系の事業をしている影響から、美容業界独特の低賃金、長時間におよぶ重労働、離職率の高さを知り、業界一働きやすいサロンを作りたいという想いからヘアカラー専門店「Age」をオープンしました。

mySDG編集部:なるほど。そういった想いがあったのですね。

今井さん:はい。あとは20代中盤ぐらいに海外に行く機会が多く、そのときに日本人美容師の価値の高さに気付かされたことも影響しています。技術レベルも高く、日本のおもてなし精神じゃないですけど、サービス力も高い。なのに、日本ではそれが当たり前とされ、評価されないことがもったいないと思ったんです。

mySDG編集部:確かに日本人美容師は全体的に技術力も高く、きめ細かなサービスは海外では高く評価されるのに、日本では標準レベルとみなされるような……。

今井さん:そうですよね。実は私自身、大学卒業後は経営・営業コンサルティング会社に入社して、サラリーマンを経験していたことがありました。個人的な偏見かもしれませんが、美容師に対する世間の評価は割と低いイメージがあるような気がしていて。離職率も半端なく高いので、美容師が置かれる労働環境や技術者としての価値を高めたいという想いがSDGsへの取り組みの根底にあるのかもしれません。


■離職率2.6%を実現。子育てしながら働き続けられる環境づくりの舞台裏とは?

mySDG編集部:美容師の地位向上という点では、SDGsの取り組みとして挙げられている「働くママ美容師の積極雇用」も今すぐ取り組むべき課題でもありますね。

今井さん:そうですね。今は国が女性活躍を後押ししていますが、美容業界でもお子さんがいらっしゃる女性美容師の地位をもっと高められるんじゃないかと思っています。弊社のスタッフはほぼ9割が女性です。特に女性の場合、早くに家庭に入られた方で非常に優秀なのにもったいないと思うような方がかなりいらっしゃいます。意欲があれば、その方々を後押しできるような環境をつくりたいというのはずっと思っていたところでした。

mySDG編集部:女性が働き続けられる環境づくりという点では、どのような取り組みをされているのでしょうか?

今井さん:正社員やパートアルバイト以外に「時短正社員制度」を活用して、一人ひとりのライフスタイルにあった働き方を提案しています。あとは弊社のサロンはヘアカラー(白髪染め)に特化しているので、一つの技術に絞ることでキャリアアップしやすい環境づくりも整備しています。

mySDG編集部:なるほど。ちなみに子どもの発熱による突然のお休みや、長時間働けないという課題に対しては、どのように対応されているのですか?

今井さん:突然のお休みを踏まえて、弊社では指名制度は設けておらず、誰がやっても同じクオリティを保つようなシステムを導入しています。あとは、サービス業なので現場に出てしまうと、時間を取られてしまうという課題はなかなか解決できません。そのため、働く意欲があって優秀な女性美容師には、管理側や運営側に引き上がることも行なっています。そうすることで、現場に立つよりも柔軟に働くことができますし、在宅ワークにも対応できるというメリットがあります。

mySDG編集部:なるほど。現場に立つよりもマネジメント側や運営側に引き上げていくことで、柔軟に働ける環境づくりをされていらっしゃるということですね。とはいえ、現実的に突然のお休みで「予約に対応できなくなった」というケースにはどのように対応されているのでしょうか?

今井さん:今は副業の時代と言われているので、美容師でもフリーランスで活動されている方が非常に多くいらっしゃいます。そういった方も積極的に採用はしているので、たまたまお休みが出てしまったという場合は、フリーランスの美容師さんに「出られませんか?」とお声かけして、その日は出ていただいたり……。そのバランスをうまく保ちながら、フリーランスの方を増やしたり、子育て中の女性美容師を増やしたり、現段階だと改善を目指して模索している状況ですね。


■美容業界を変えるはじめの一歩。小さな波紋から広がるSDGsの輪に期待



mySDG編集部:設立当初から「働き方」「環境」の課題に取り組んでこられたということですが、広まってほしい成果などがあれば、ぜひ教えてください。

今井さん:ヘアカラー剤の空き容器は、300kg集まって、やっと1台の車椅子を寄付できると聞いています。なので、弊社の場合は2年に1台、車椅子を寄付している状況でしょうか。数字からしたらまだまだ小さいですけど、BBリサイクルパートナーズの取り組みに賛同する理美容室が増えれば、より多くの車椅子を寄付できると思いますので、ぜひ全国の理美容室さんに参加してほしいですね。

mySDG編集部:ちなみに雇用の取り組みについても、具体的な成果などはありますか?

今井さん:現時点で子育て中の女性美容師は、全体の3分の1を占めており、バランスもうまく保てています。さらに美容業界の高い離職率の中でも2.6%の離職率に留まっていますので、制度をうまく運用できていると実感しています。

mySDG編集部:美容業界で、女性が出産後も柔軟に働き続けられる環境を実現されているのは、素晴らしいですね。

今井さん:ありがとうございます。女性の場合、ライフイベントを通して柔軟な働き方ができるよう、正社員からパートになれたり、逆に子育てが落ち着いてから正社員で働くことができたり、自由な働き方ができる制度や社内風土を作ることを大切にしてきました。

mySDG編集部:それは離職率の低さにも表れていますよね。では最後に今後の展望について教えてください。

今井さん:ヘアカラー剤容器のリサイクルは店舗が増えれば、必然的に使う量も増えるので、これまで通り継続的に取り組んでいく予定です。働き方の課題については、働く女性の地位向上はもちろん働きやすい環境づくりに、ますます取り組んでいきたいです。会社が少しずつ大きくなっていますので、このまま単純に大きくするのではなく、フランチャイズ化を進めて女性管理者を増やすほか、女性の役員登用も積極的に行なっていきたいと考えています。

mySDG編集部:ヘアサロン運営における女性活躍の実現をますます期待しています。今井さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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