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【取材記事】職人の手による「失くしたくない大切な傘」を世に広め、傘のゴミ削減を叶える

柴田株式会社

傘の消費量が世界一といわれている日本。その生産量は、年間で約1億3,000万本という本数といわれており、今の日本の人口を上回っているのが現状です。「使い捨て」として扱われがちな傘ですが、再利用できるパーツを生かすなどといった視点をちょっと変えるだけで、傘のゴミ削減につながります。今回は、2022年6月11日「傘の日」に、「失くしたくない大切な傘」をコンセプトとして完全オーダーメイド傘ショップとしてスタートし柴田株式会社 の柴田成俊氏に傘×ごみ問題×SDGsを軸にインタビューしました。




お話を伺った方


柴田 成俊(しばた・なりとし)様
柴田株式会社代表取締役社長

1968年、大阪府大阪市生まれ。東海大学法学部法律学科卒業。その後、株式会社レナウンに入社。
婦人服事業本部の都内営業として新宿、池袋、渋谷地区を担当。1996年、柴田株式会社に入社。
マフラー、ストールなどのネックファッション事業を立ち上げ、国内外の製造拠点の開拓、企画、仕入れ、営業を一手に担う。


■エコではない傘だからこそ、再利用できない部分をできるだけ長く使って欲しいという思いが「失くしたくない傘」のスタートきっかけだった


オーダーメイド傘屋「SUN」


mySDG編集部:傘に特化したSDGsの事業、プロジェクトをやろうする「きっかけ」というのを教えていただければと思います。

柴田さん:(弊社は)元々、私の祖父が85年前に個人創業で立ち上げたんです。私は3代目になります。戦争中は軍事パーツの製造を余儀なくされたこともありましたが、戦後、再び個人創業で洋傘店を作りました。今年、86年目に入ります。傘屋の業界では、決して古い方ではありません。真ん中ぐらいのところだと思います。

mySDG編集部:私自身、傘って使い方がすごい粗く、もったいないけど、骨が折れたからまた新しい傘を買ってしまいます。「壊れたから捨てる」みたいな人がすごく多いと思います。100均で買ったりとか、ワンコインで買うような傘でして――。これって、ごみ問題の解決にならないと思いながら、そういった繰り返しをするのですが、今回、その逆の発想として、「失くしたくない大切な傘で傘の問題の解決する」きっかけを教えていただければと思います。

柴田さん:日本洋傘振興協議会で、傘ゴミについては常に課題です。でも、傘屋は「エコ」や「SDGs」からかけ離れた業界なんです。なぜかというと、骨の部分、生地の部分、持ち手の部分――、すべて素材が違うので。結局、それで「エコ」っていう部分が全くできない、再利用もできない――。高温で燃やすか、埋め立てるしか処理方法がないというような形になっています。傘業界の中で、パーツごとにバラバラにできる傘・エコ傘をやろうとしたのですが、レンチのような工具が必要であったり、バラすのが面倒くさいという理由で、結局、消費者の方に受け入れられなかったんですよ。他社がエコ傘で地道におやりになっているのですが、浸透しないというのが現状ですね。

それで実際ゴミのレベルから言うと、年間250トンから360トンの傘のゴミが出ているんです。10tトラック36台分の傘ゴミですから、異常ですよね。年間でいうと、人口よりちょっと多いぐらいの傘が製造されているんですが、そのうち6割から7割がビニール傘ですね。コンビニや100均で売っている傘です。あと2、3割程度が、おおよそ1900円から3500円ぐらいまでのちょっと安価なレンジの傘屋さんなんです。私達が作っている「日本製」の傘は残り10%もないくらいの傘の量でしかありません。結局、修理しようと思っても1900円だとか3900円までの傘っていうのは、おおよそ修理代が高くつきかねないレベルになってしまいますよね。そうすると、みんな壊れた傘を捨ててまた新しい傘を買いますよね――。
修理代を出しても直したい、使い続けたい傘。もしくは生地が破れても傘の骨が使えるなら生地だけ新しくしましょうよと。もし、手元がボロボロになったら手元だけ変えちゃいましょうよ――、っていうのが今回、「SUN」というお店を立ち上げた理由ではありますね。

結局、どうしてもエコにならない部分――、つまり、再利用できない部分をできるだけスパンを長くしようとしています。元々、傘は2年から3年の交換頻度って言われてるんですよ。それを要は、2年から3年のスパンではなく、4年~6年使っていただければゴミが半分になりますよね。それを目指すのが、我々、高いレンジの傘屋のお仕事だと思います。
世の中、オーダーメイドっていう傘屋は、ネットだと結構あったりするんですよ。例えば、5種類の中の生地から選んでくださいと――、要はいくつか選択肢のある傘を「オーダーメイド」と今まで言っていたような感じなんですね。でも、それだと面白くないよねっていうことで、50種類以上の骨や100種類以上の生地からお客様自身が選んで、1から10まで楽しんで商談できれば……という思いで、このお店を立ち上げました。
その気になれば生地のオリジナルプリントも可能です。他社にはない自由度で、傘づくりを楽しんでいただけることが弊社の強みだと思います。


■対面でもオンラインでもオーダーメイドの傘が作れる体制を整える



mySDG編集部:お客様と対面で商談というと、今コロナとか、遠隔地に住んでいらっしゃる方っていうのは直接お店に足を運べないと思うんですけども、そういった場合はオンライン商談とかでちょっと見せてくださいとか、写メを撮ったりして、話を進めていくことは可能なんでしょうか?

柴田さん:今はご来店いただいて対面だけの対応にさせていただいていますが、近い将来オンライン商談ができるように準備中です。オンラインだとイメージがお客さんに湧きにくいっていうのがどうしてもあるので、それをどういやったらイメージを持ってもらえるか、そういうソフトを対応させたりして準備を進めています。近々、オンラインの実験第1号を予定しています。

mySDG編集部:傘の素材っていうのは、廉価品から多分ブランド品など色々とあると思いますが、どの素材でも対応できるような感じですか。

柴田さん:(店舗のプロダクトを見ながら)今、ここにある素材は「雨傘」と言われるもの――、晴雨兼用傘です。それと日傘があります。世の中の傘の99%が中国製という中で、こちらは全て日本製で日本の職人が縫っています。

mySDG編集部:職人の方って、何人がかりで、オーダーしてから、どのくらいでお客様のお手元に渡されるのでしょうか?

柴田さん:弊社には20代から30代の傘職人が3人いて、その子たちを中心にして、大体オーダーから2ヶ月をいただいて製作しています。ただ、繁忙期や閑散期によって納期が変わってくる場合があります。早いときは1ヶ月以内であがるモノもありますし、デザインによっては半年かかるモノもあります。時期によって、納期のブレが生じるのが現状です。

mySDG編集部:今だったら多分、日傘もあるし、傘の需要がすごくあります。何とかその時期(=オンシーズン)に使いたいっていうのであれば、4月ぐらいまで、春先ぐらいまでに依頼していい感じですね。

柴田さん:そうですね。お電話いただき、メールで「おおよそどのぐらいの納期です」っていうようなアナウンスはしていますが、だいたい2ヶ月が主です。


■「ちょっといい傘を使う」ということ浸透すれば、傘のゴミは減らせる



mySDG編集部:プロジェクトを考えていた段階ではわからなかったけれど、実際やってみて何か発見したこととか、何か課題というか改善していきたいことはありますか?

柴田さん:うち自体が今まで製造しかやったことがない会社なんですよ。つまり、百貨店、問屋さん、量販店の問屋業をやられているところに商品を納める傘メーカーです。逆に顧客管理やお客様のデータとか、どっちかというと今までうちはやったことない――。モノ作りはずっとやっていたのですが、直接、消費者さんとお店でお話をするというのは滅多にないんですよ。ちょこちょこガレージセールとかで話すことがあるんですけれど、オーダーメイドの傘をお客様と一緒に作るという経験はこれまでありませんでした。それを今回立ち上げたお店で初めてやっているので、不足するところだらけだと思いますね。それでも1時間から1時間半くらいの商談の中で、お客様自身がとても楽しんでいただけているなという感じはすごくあります。

mySDG編集部:多分、自分たちで傘をカスタマイズするからモノに「愛着が湧く」とかっていうのも出てくるかもしれないですよね。

柴田さん:実は、それが狙いです。お客様にとって「失くしたくない傘」もしくは「修理しても使っていたい傘」であれば、ありがたいですね。

mySDG編集部:どこかに傘を置いてきても、その場所に戻って、傘を大切にしたいと思いますよね。

柴田さん:普通に100均のビニール傘だったら……。

mySDG編集部:「もういいや」ってなりますよね。「あそこの改札に傘を置いちゃったから戻らないと!」という思いになるとすごくいいですよね。

柴田さん:はい、長く使っていただけるコツは「失くさないこと」です。でも、ビニール傘を使っていた人が、1万円を超えるような傘に変えたときっていうのは、使うときの感覚が使い捨てに近いビニール傘なので、どうしても忘れがちなんです。濡れなければ何でもいいやっていう人は、ビニール傘でもいいのですが、服に合わせる、ちょっといいものを大切に使いたい、「ゴミ」のことを考えていただけいるのであれば、初めの「意識」を変えられます。多分、傘を結構忘れないですよ。そういうふうに使っていただければ、ありがたいなとは思います。


■「修理できる傘」を提供することは傘屋だからこそできる強み



mySDG編集部:御社のオーダーした傘を使った後にこんな感じで使って欲しいとか、会社全体でこれからやってみたいことを教えていただいてもよろしいでしょうか。

柴田さん:例えば、傘が風で吹っ飛んでも、骨部分は結構使えるんですよ。その部分を大事にしていただけたらありがたいと――。それをもとに新たな傘を提案できるので、捨てるのは生地の部分だけで済むというのが、やっぱり事業のメインとしてあります。それがちょっとでも世の中ゴミ削減になるんじゃないかなと――。傘屋さんは、その辺はほとんど失敗してるので、それを新たにやりたいという部分ですね。それと、2023年の初頭に、この「SUN」以外にもう1つ新ブランドを立ち上げるために準備をしています。こちらもコンセプトは「失くしたくない大切な傘」。オーダーメイドではありませんが、他の傘屋が決してやらないデザインで、きっと喜んでいただけると思います。もちろん、防水撥水性であるとか、堅牢度、色落ち、あとは遮光率であるとか、太陽を入れないというのを守りながら、新たな傘の展開をしようと思って今準備中です。ECサイトでご注文いただけるので、世界中どこからでも注文可能です。

mySDG編集部:傘が折れてもう終わりだっていうときもあるし、状況によって自分で曲げて真っすぐリセットできたモノもあり、傘の骨部分が使えるというのが実体験ではあります。傘の生地や、破損した傘を集めるとかっていうのは、御社がされていらっしゃるのでしょうか。

柴田さん:古い傘を集めて1本の傘にするのは、正直現実的ではありません。(傘の)長さや太さって、本当に様々ですから……。
(店舗内、折傘のディスプレイの部分を画面で写す)ここが折傘……。実は、これみんなサイズが違いまして、1本のパーツが全部バラバラなんですよ。だから、バラバラになった傘を一つの傘にするっていうのは、ほぼ不可能になっちゃうんですね。ただ、うちの傘自体は、例えば、よくあると思うんですけど、「ここが壊れた」とかありますよね。(オンラインで傘を見せながら)見えますか?
mySDG編集部:(画面を見て)見えます。

柴田さん:うちは、壊れたら外して直します。要はうちで扱っている(傘の)骨は基本的に全パーツ取り替え可能なんですよ。生地が大丈夫で、骨が折れても、そこだけ外して、もう一度入れ直すっていうことをしていますので、その辺の対応は多分、ほかの傘屋さんではできないと思います。


■販売路線をシフトチェンジしたのは時代背景と社員を守るためだった



mySDG編集部:御社がこのような事業をやっているっていうのが、まだ珍しいことかもしれません。ブルーオーシャンの段階だと思うんですけども、今後、SDGsと絡めてプロモーションしていくには、どのような対策をするとかの構想をお考えでしょうか?

柴田さん:今回、コロナで経済的に沈みましたし、正直、我々も製造元も半分以下になっているんですね。業界ももうズタボロになりましたし、廃業された会社ももちろんあります。そんな中で考えたのは、社会貢献より先に「残っている社員を何とかしなければ」ということでした。

mySDG編集部:これもSDGsに絡むことですよね。

柴田さん:そうですね。(社員の)家族も含めて雇用できるところは何とか守らないと、という中で、商売の手法を変えたっていうのが大きくあります。その上で、将来、10年後を見据えているかっていうのは正直、私は見据えていないです。せいぜい4年後しか見えていなくて、コロナで市場がやっと動き出して、需要は増えていますけど、店頭自体もやっと動き出したばかり。今までやってきたルートセールスからできるだけ離れて、「一人ずつ丁寧にお相手する」という風になったのは、残っている社員とその家族を守るためです。「4年しか見えてない」というのは、コロナで3年、経済状況が沈みましたから――。なおかつ今、エネルギーが高くて運送費も高くて、材料費が全部上がっているんですね。傘業界でも綿だったら綿花が上がっていますし、傘の骨ですと鉄や樹脂も全部上がっています。だから、そういうことがあって、実際コスト自体もどんどん上がっているのが現状なんですよ。なので3年4年のスパンで考えることが大事かなと思っています。

mySDG編集部:今の世の中、本当に見えないことが多いじゃないですか――。この1年先どうなっているかわからないし、またコロナみたいものが来るということも十分ありえますから。


■これからのコンセプトは「長く使える」「修理できる」「日本製」、持続可能につなげていく――



柴田さん:商品を「できるだけ長く使える」「修理してでも長く使える」っていうのが第一前提です。元々、弊社はパラソル屋(※ここでは日傘のこと)なんです。日本製メインのパラソル屋からスタートして、そこから兼用傘、雨傘と販路を広げ、他社と順序が反対なんですよ。「日本製パラソル」ってなると、傘屋の業界ではうちの名前が出ると思います。
(画面越しでパラソルを見せる)こういうモノって、雨傘の縫い方と違うんですよ。

mySDG編集部:そうなんですか。

柴田さん:先ほどお伝えした通り弊社はパラソルからスタートしている会社です。そこからスタートして、今雨傘という他社とは逆のパターンなので、職人たちには雨傘の技術をさらに磨いてもらわなくてはいけませんね。

mySDG編集部:本当にゲリラ豪雨に耐えられるような傘が欲しいです。

柴田さん:今回テーマとしては、「長く使える」「修理できる」、なおかつ「日本製」――。ここにある傘は全部、日本でしか作ってないです。日本では傘職人の高齢化が深刻です。若い世代が育たない理由は、生活できないからです。うちの若い職人たちにも、もっとたくさん仕事をさせてあげたいという思いはあります。そして、彼ら、彼女たちに続く傘職人を育てられたら嬉しいですね。



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